
「AIを入れれば、この業務は楽になりますか?」
ご相談の場で、いちばん多くいただく質問です。結論からお伝えすると、AIを入れるだけで解決する業務は、ほとんどありません。 ただしそれは、AIが役に立たないという意味ではありません。AIが力を発揮できるかどうかは、AIを載せる「業務」の側で決まる、ということです。
この記事では、AIやシステムの導入の前に、なぜ業務を整える必要があるのかを、3つの理由に分けてお伝えします。
理由1:仕事の大半は、言葉になっていない「暗黙知」だから
たとえば、経理の請求書処理に時間がかかっているという相談を受けたとします。「請求書の読み取りと入力をAIで自動化すれば解決」と考えたくなりますが、現場で作業を見せてもらうと、こんな判断が隠れていることがよくあります。
- 「このお客様は前に支払いが遅れたから、優先して処理する」
- 「法律上は問題ないが、部長がこの書き方の請求書は受け取らないと言っていた」
- 「営業が金額を間違えていても、経理がいつも確認して直している」
こうした判断は、マニュアルにもシステムにも書かれていません。担当者の頭の中にだけある「暗黙知」です。この部分を言葉にしないままAIを入れると、「今までは経理が気づいてくれたのに」という問題が、導入後に次々と起きます。
理由2:整っていない業務を自動化すると、混乱も速くなるから
効率的な業務に自動化を当てはめれば、効率はさらに上がります。一方で、非効率な業務に自動化を当てはめると、非効率まで速く、大きくなります。
担当範囲があいまいなまま通知を自動化すれば、誰も対応しない通知が増えるだけです。手順が人によって違うままツールを入れれば、ツールの横で紙やExcelが回り続けます。「使われないツール」の多くは、ツールではなく業務の側に原因があります。
理由3:業務改善のゴールは、効率化ではなく「売上」だから
業務改善というと、作業時間を減らすことが目的に見えます。しかし本当のゴールは、空いた時間と人を、営業・接客・本業といった売上につながる仕事に戻すことです。
人を増やして解決しようとすると、採用と教育の費用が積み上がり、新しい人が立ち上がるまで現場の負担は減りません。業務を整えて仕組みで回るようにすれば、採用を待たずに、受けられる仕事の量そのものを増やせます。だからこそ、AIやシステムは「どの業務の、どの時間を空けて、何に使うか」を決めてから入れる必要があります。
業務を整えると、AIはここまで任せられる
先ほどの請求書処理の例で考えてみます。暗黙知を言葉にして、取引先ごとのルールと例外の一覧にしておけば、AIに任せられる範囲は一気に広がります。
- 読み取りと入力はAIに:届いた請求書のPDFや写真から、取引先・金額・支払期日を読み取り、会計ソフトに登録する下書きを作る
- 照合もAIに:発注書や契約の金額と突き合わせ、「前回と金額が違う」「支払期日がいつもと違う」といった違和感に印をつける
- 例外と最終判断は人に:印がついたものだけを経理担当が確認する。確認した理由はルールの一覧に書き足し、次からはAIが判断できるようにする
人は全件を目で追う作業から離れ、本当に確認が必要な数件と、取引先との調整に時間を使えるようになります。ルールの一覧が育つほど、AIに任せられる範囲も広がっていきます。
AIに渡す前の、5つのチェック
- 入力:PDF・メール本文・フォームの回答など、AIに渡すものの形がそろっているか
- 出力:会計ソフトの項目、Slackへの通知など、渡し先と形式が決まっているか
- 判断基準:AIが迷わないよう、ルールが文章になっているか
- 例外の扱い:ルールに当てはまらないとき、誰に戻すかが決まっているか
- 人の確認ポイント:最終的に人が見る場所が、1か所に絞られているか
では、何から始めればいいのか
TRYANCEでは、次の順番で進めています。
- 入り込む:会議室で説明を聞くのではなく、実際に作業している場所で教わる。例外のときの動き方まで聞き取る
- 設計する:業務の流れ・担当・判断基準を言葉にして、AIやシステムに任せる範囲を決める
- つくる:AI・システム・自動化から、その業務に一番効くものを選び、形にする
- 根づかせる:マニュアルと運用ルールを整え、使われ続けるまで見届ける
遠回りに見えるかもしれませんが、導入したものが現場で使われ、時間が本当に空くまでの最短の道だと考えています。
「自社のどの業務にAIが効くのか分からない」という段階でも構いません。まずは現状をお聞かせください。
自社の業務のどこにAIやシステムが効くか、まずは無料で診断します。
課題が整理できていない段階で構いません。売り込みはしません。
